受験の呪縛をほどいてあげよう。アメリカで「できない」は、始まりのサイン
- Manami
 - Jun 29
 - 5 min read
 
──できない今より、「どうしたらできるか」を見てほしい
アメリカに駐在している日本人家庭の中には、現地校や補習校に通う子どもたちの教育について、日々真剣に考えている方が多くいらっしゃいます。
特に、小学校高学年〜中学生くらいになると、日本の受験制度や学力評価の基準をどう捉えるか、悩む場面も増えてくるのではないでしょうか。
日本では「できているか、できていないか」「合格か、不合格か」という明確な“点”での評価が一般的です。
でも、アメリカの教育環境に身を置くと、様々な基準があると気づかされます。
今回は、「受験文化がもたらす“点の教育観”」と、そこから抜け出すヒントを、アメリカでの子育て視点から考えてみたいと思います。

「できていない」ことが、なぜこんなに怖いのか
子どものテスト結果、模試の判定、スピーキングの出来具合……。
教育の場面では、どうしても「評価」がついて回ります。
日本の受験文化では、
✔ できる=良いこと
✔ できない=悪いこと
という構図が、あまりに当たり前になっています。
特に帰国後の中学受験、高校受験、英検などを意識すると、「今、合格ラインに届いているかどうか」という“点”にばかり目が向きがちです。
でも、その結果、子どもが「今できていない=自分はダメ」と思い込んでしまうこともあるのです。
本来、できないことは「過程」にすぎない
たとえば、逆上がりができなかったら。
九九がまだ全部言えなかったら。
英語で文章がスラスラ書けなかったら。
それって、「この子はもう無理」と判断することですか?
そんなはずはありませんよね。
大人だって、初めてのことをすぐにうまくできるわけではありません。
「できない」というのは、「できるようになる前の状態」にすぎない。
それなのに、「今できない=失敗」と見なされてしまうことが、子どもたちの成長の芽をつんでしまうことがあるのです。
アメリカの教育が大切にしている「プロセスの価値」
アメリカの現地校や教育現場では、「結果」よりも「過程」を大切にする場面が多く見られます。
発表で失敗しても「チャレンジしたこと」を評価する
答えが違っても「考えた道のり」に注目する
自分の意見を述べることに「正解・不正解」はない
こうした教育観にふれていると、「できないこと」に過剰に反応せず、「どうやってできるようになるか」を一緒に考える空気感を感じることができます。
アメリカでの生活は、こうした「線で見る教育」に目を向ける良い機会となります。
点ばかりを見ていると、子どもは考えるのをやめてしまう
「とにかく正解を言いたがる」
「失敗を極端に怖がる」
「考える前に答えを探す」
こうした子どもたちの姿勢は、受験文化に由来する“点の教育観”の影響とも言えます。
評価の基準が「○か×か」「合格か不合格か」ばかりだと、子どもは“自分の考えで答えを作る”ことをやめてしまうのです。
でも英語学習、とくに英作文や面接のような場面では、「正解のない問い」に自分の言葉で答える力が求められます。
だからこそ、
「あなたはどう思う?」「それはなぜ?」「その考えに至った理由は?」
と問いかけながら、思考のプロセスに寄り添う教育がますます大切になってきます。
英語学習こそ、「線」で見る視点が大切
アメリカで生活する子どもたちは、毎日英語に触れながら、少しずつ言葉を吸収していきます。
でもそれは、今日から明日に劇的に変わるような“点の伸び方”ではありません。
週単位、月単位で、「あれ、いつの間にか話せるようになってる」と気づくような、じわじわと続いていく“線”の成長なのです。
「英検に合格した」「学校の英語のテストで良い点を取った」といった“点”だけで評価してしまうと、本質的な学びを見逃してしまう可能性かあります。
「どうしたらできるようになるか?」の問いを日常に
「今できていない」に注目するのではなく、
「どんな練習をすればよさそう?」「前はどこまでできてた?」「今日はできるようになったことあった?」
そんなふうに、“できるようになる過程”を言葉にする習慣を、親子で少しずつ取り入れてみてください。
特にアメリカでの駐在生活では、英語を学ぶ場面が日常のあちこちにあります。
買い物のとき、友達と話すとき、宿題をするとき……。
生活そのものが、英語力アップの“線”を支えているのです。

「線」で見ることは、子どもを信じること
受験やテストは、どうしても「点」で子どもを見る場面です。
でも、日常の教育で本当に必要なのは、点ではなく、線で見るまなざし。
「今どれだけできてるか」より、「これからどう育っていくか」を信じてあげること。
それが、子どもにとっての安心になり、自分で伸びていく力につながります。
アメリカでの生活は、受験中心の教育観から少し離れて、「学ぶって面白い」「考えるって楽しい」と思えるチャンスでもあります。





