「この意見でいいですか?」と聞く子どもに伝えたい、大切なこと
- Manami
 - Jul 17
 - 6 min read
 
英作文や英語面接の練習をしていると、子どもたちからよく出てくる質問があります。
「この意見でいいですか?」
一見、素直で前向きな姿勢のように見えるこの言葉。
でも、実はここに“考えることをやめてしまうクセ”が隠れているかもしれません。
先生に「この意見で合っていますか?」と確認したくなる気持ちはよく分かります。
けれど、英検や帰国子女枠の面接、さらにはこれからの教育で求められているのは、「正しい答え」ではなく「自分の答え」です。
今回は、「この意見でいいですか?」と聞かれたときにどう私が返すか、そして子どもの思考をどう育てていくかという視点から、実際の指導法をご紹介します。

正解を探してしまう子どもたち
英語のライティングやスピーキングでは、模範解答が存在するように思われがちです。
実際、学校や塾では「こう答えれば得点が高い」「こう書けば点が取れる」といった指導が行われることもあります。
そのため、子どもたちは自然と「評価される答え」を探しがちになります。
「Yesと言ったほうが評価が高いのでは?」
「この表現が大人には好かれるのでは?」
「理由は将来のためって言っておけば無難じゃない?」
こうした発想は、思考停止を引き起こします。
そして、「自分の意見を言う」という本来の目的から離れてしまうのです。
面接や英作文に「正解」はない
たとえば英検の面接で、「子どもはスマートフォンを使うべきですか?」と聞かれたとします。
この問いに「正解」はあるでしょうか?
Yesと答える人もいれば、Noと答える人もいる。どちらを選んでも、理由が論理的で説得力があれば評価されます。
つまり、大切なのは「どちらを選んだか」ではなく、「なぜそう思ったか」です。
それなのに、子どもたちは「この意見で合っていますか?」と聞いてしまう。
これは、“正解探し”の癖がついてしまっているサインでもあります。
「それは先生に聞かれても分かりませんよ」と伝える理由
そんなとき、私が必ず言うのはこの言葉です。
「それは先生に聞かれても分かりませんよ。あなた自身の意見だから。」
これは冷たく突き放す言葉ではありません。
むしろ、子どもに「自分の頭で考えていいんだよ」と許可を出す言葉です。
自分で選び、自分で考え、自分で責任を持つ。それが「意見を持つ」ということです。
最初は「えっ…」と戸惑う子もいます。
でも少しずつ、「じゃあ、どう思ってるんだろう?」と、自分の内側に目を向け始めます。
意見を深めるには、問い直しがカギ
「この意見でいいですか?」と聞かれたら、「あなたはそう思うの? そう思ったきっかけは?」と問い直してみましょう。
たとえばこうです。
「本当にそう思ってる?」
「それって、いつそう感じたの?」
「他の人だったらどう感じると思う?」
「それって、あなたにとって大事なこと?」
こうした問いかけは、子どもに「考える時間」を与えます。
すぐに答えが出なくても大丈夫。
大切なのは、考える習慣を育てることです。
「答えの精度」より「思考の深さ」
ある小学生の生徒が、英検の面接練習で「子どもはもっとテレビを見るべきだと思いますか?」という質問に対して、
"Yes. Because TV gives us knowledge."
と答えました。
そのままでも答えとしては成立します。
でも私は、さらにこう聞いてみました。
「テレビのどんな番組を見て、どんな知識が得られたの?」
すると、彼は少し考えた後に、答えました。
「ニュースとか、社会のこと」
もう一度聞きました。
「例えば?」
ここで限界です。
誰かによって与えられた答えは、必ずどこかで行き止まりになります。
そして、行き止まりになったとき、考える力が訓練されていない場合、逃げ場がなくなります。
そして、私は聞き方を変えました。
「今まで見た番組の中で、一番自分が驚いたことは何だった?」
するとその子はじっくりと考え込みました。
「動物番組で、サイが狩られていることを知ってショックだった。」
と言いました。
たった一つの問いかけで、答えがぐっと具体的になり、本人の思いや感情が伝わるようになったのです。
帰国子女受験でも同じことが求められる
帰国子女受験の面接では、暗記された答えよりも、自分の考えを自分の言葉で話せるかどうかが重視されます。
たとえば、
「海外生活で学んだことは何ですか?」
「日本に帰ってきて驚いたことは?」
「多様性とは何だと思いますか?」
これらはどれも「正解のない問い」です。
正しく見える答えより、自分の経験に根ざしたリアルな言葉こそが面接官の心を打ちます。

「意見を出すことは怖いこと」にならないように
多くの子どもが「この意見でいいですか?」と聞いてしまう背景には、「間違えたら怒られる」「変なことを言って笑われたらどうしよう」という不安があります
。
だからこそ、私たち大人がやるべきことは、意見を安心して出せる場をつくることです。
「そう思ったんだね。理由もあるし、面白い視点だよ。」
「私とは違うけど、それも一つの見方だね。」
「じゃあ他の人はどう考えるんだろうね?」
こんなふうに、子どもが出した意見を評価しすぎず、否定もせず、ただ一緒に考えることが大切です。
「あなたの意見は、あなたにしか言えない」
英作文も面接も、子どもたちが「正解を言うこと」に慣れすぎてしまうと、自分の中の思考や感情を外に出せなくなってしまいます。
でも本当は、あなたの考えにこそ価値がある。
たとえ未完成でも、間違っていても、あなたにしか語れない言葉がある。
だからこそ、「この意見でいいですか?」と聞かれたら、私はこう答えます。
「それは先生には分かりません。あなたの意見だから」
まとめ:「問いの答え」よりも「答えへの姿勢」を育てよう
英語教育の場面では、つい「答えの正しさ」に目が向きがちです。
でも、本当に育てたいのは、「自分の意見を持ち、それを深めていく力」です。
英検の面接も、帰国子女受験も、社会に出てからの発信力も、すべてに通じるのは「自分で考える力」です。
その第一歩が、「この意見でいいですか?」と聞かれたときに返す、
「それは先生に聞かれても分かりませんよ。」
という言葉なのです。
子どもたちが、自分の考えを安心して育てていけるように。
正解よりも、「自分の言葉」を大切にする教育を、いま一緒に見直していきましょう。





