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「この意見でいいですか?」と聞く子どもに伝えたい、大切なこと

英作文や英語面接の練習をしていると、子どもたちからよく出てくる質問があります。

「この意見でいいですか?」

一見、素直で前向きな姿勢のように見えるこの言葉。


でも、実はここに“考えることをやめてしまうクセ”が隠れているかもしれません。


先生に「この意見で合っていますか?」と確認したくなる気持ちはよく分かります。


けれど、英検や帰国子女枠の面接、さらにはこれからの教育で求められているのは、「正しい答え」ではなく「自分の答え」です。


今回は、「この意見でいいですか?」と聞かれたときにどう私が返すか、そして子どもの思考をどう育てていくかという視点から、実際の指導法をご紹介します。


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正解を探してしまう子どもたち


英語のライティングやスピーキングでは、模範解答が存在するように思われがちです。


実際、学校や塾では「こう答えれば得点が高い」「こう書けば点が取れる」といった指導が行われることもあります。


そのため、子どもたちは自然と「評価される答え」を探しがちになります。


  • 「Yesと言ったほうが評価が高いのでは?」

  • 「この表現が大人には好かれるのでは?」

  • 「理由は将来のためって言っておけば無難じゃない?」


こうした発想は、思考停止を引き起こします。


そして、「自分の意見を言う」という本来の目的から離れてしまうのです。


面接や英作文に「正解」はない


たとえば英検の面接で、「子どもはスマートフォンを使うべきですか?」と聞かれたとします。


この問いに「正解」はあるでしょうか?


Yesと答える人もいれば、Noと答える人もいる。どちらを選んでも、理由が論理的で説得力があれば評価されます。


つまり、大切なのは「どちらを選んだか」ではなく、「なぜそう思ったか」です。


それなのに、子どもたちは「この意見で合っていますか?」と聞いてしまう。


これは、“正解探し”の癖がついてしまっているサインでもあります。


「それは先生に聞かれても分かりませんよ」と伝える理由


そんなとき、私が必ず言うのはこの言葉です。

「それは先生に聞かれても分かりませんよ。あなた自身の意見だから。」

これは冷たく突き放す言葉ではありません。


むしろ、子どもに「自分の頭で考えていいんだよ」と許可を出す言葉です。


自分で選び、自分で考え、自分で責任を持つ。それが「意見を持つ」ということです。


最初は「えっ…」と戸惑う子もいます。


でも少しずつ、「じゃあ、どう思ってるんだろう?」と、自分の内側に目を向け始めます。


意見を深めるには、問い直しがカギ


「この意見でいいですか?」と聞かれたら、「あなたはそう思うの? そう思ったきっかけは?」と問い直してみましょう。


たとえばこうです。


  • 「本当にそう思ってる?」

  • 「それって、いつそう感じたの?」

  • 「他の人だったらどう感じると思う?」

  • 「それって、あなたにとって大事なこと?」


こうした問いかけは、子どもに「考える時間」を与えます。


すぐに答えが出なくても大丈夫。


大切なのは、考える習慣を育てることです。


「答えの精度」より「思考の深さ」


ある小学生の生徒が、英検の面接練習で「子どもはもっとテレビを見るべきだと思いますか?」という質問に対して、

"Yes. Because TV gives us knowledge."

と答えました。


そのままでも答えとしては成立します。


でも私は、さらにこう聞いてみました。


「テレビのどんな番組を見て、どんな知識が得られたの?」

すると、彼は少し考えた後に、答えました。

「ニュースとか、社会のこと」

もう一度聞きました。

「例えば?」

ここで限界です。


誰かによって与えられた答えは、必ずどこかで行き止まりになります。


そして、行き止まりになったとき、考える力が訓練されていない場合、逃げ場がなくなります。


そして、私は聞き方を変えました。


「今まで見た番組の中で、一番自分が驚いたことは何だった?」

するとその子はじっくりと考え込みました。


「動物番組で、サイが狩られていることを知ってショックだった。」

と言いました。


たった一つの問いかけで、答えがぐっと具体的になり、本人の思いや感情が伝わるようになったのです。


帰国子女受験でも同じことが求められる


帰国子女受験の面接では、暗記された答えよりも、自分の考えを自分の言葉で話せるかどうかが重視されます。


たとえば、


  • 「海外生活で学んだことは何ですか?」

  • 「日本に帰ってきて驚いたことは?」

  • 「多様性とは何だと思いますか?」


これらはどれも「正解のない問い」です。


正しく見える答えより、自分の経験に根ざしたリアルな言葉こそが面接官の心を打ちます。

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「意見を出すことは怖いこと」にならないように


多くの子どもが「この意見でいいですか?」と聞いてしまう背景には、「間違えたら怒られる」「変なことを言って笑われたらどうしよう」という不安があります

だからこそ、私たち大人がやるべきことは、意見を安心して出せる場をつくることです。


  • 「そう思ったんだね。理由もあるし、面白い視点だよ。」

  • 「私とは違うけど、それも一つの見方だね。」

  • 「じゃあ他の人はどう考えるんだろうね?」


こんなふうに、子どもが出した意見を評価しすぎず、否定もせず、ただ一緒に考えることが大切です。


「あなたの意見は、あなたにしか言えない」


英作文も面接も、子どもたちが「正解を言うこと」に慣れすぎてしまうと、自分の中の思考や感情を外に出せなくなってしまいます。


でも本当は、あなたの考えにこそ価値がある


たとえ未完成でも、間違っていても、あなたにしか語れない言葉がある。


だからこそ、「この意見でいいですか?」と聞かれたら、私はこう答えます。

「それは先生には分かりません。あなたの意見だから」

まとめ:「問いの答え」よりも「答えへの姿勢」を育てよう


英語教育の場面では、つい「答えの正しさ」に目が向きがちです。


でも、本当に育てたいのは、「自分の意見を持ち、それを深めていく力」です。


英検の面接も、帰国子女受験も、社会に出てからの発信力も、すべてに通じるのは「自分で考える力」です。


その第一歩が、「この意見でいいですか?」と聞かれたときに返す、

「それは先生に聞かれても分かりませんよ。」

という言葉なのです。


子どもたちが、自分の考えを安心して育てていけるように。


正解よりも、「自分の言葉」を大切にする教育を、いま一緒に見直していきましょう。



記事作成者 (Manami Palmini


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講師経歴

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  • 国際基督教大学、大学院にて英語の集中クラスを受けながら、演劇や脚本の研究に携わる

  • 日本の個人塾で3年間英語講師としての経験あり

  • ​ニューヨーク大学(NYU)大学院にて芸術教育学を学び、言語学習における芸術活動の効果について研究

  • ​TESOL(英語教授法)資格あり

過去のサポート歴

  • 現地校、日本人学校に通うお子さんの日常英会話

  • 英検、中学、高校、大学受験対策

  • 駐在の方のためのビジネス英会話

  • お子さんがいる方のためのママ友さんとのスモールトーク、学校関連の会話

  • 研究員として渡米された方のためのプレゼンテーションのお手伝い



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