英検の面接で「本当の意見」が言えない子どもたちへ
- Manami
- Aug 4
- 5 min read
英検の面接練習をしていると、ときどきこんな場面に出会います。
質問に対して、子どもはきちんと英語で答えている。
文法的にも間違っていないし、構成も悪くない。
けれど、なぜか話が深まらない。
「うまく言えているのに、何かが足りない」と感じる瞬間です。
先日、ある小学生の生徒と英検の二次試験(面接)の練習をしていたとき、まさにそんな場面がありました。
テーマは「毎日勉強することは良いことだと思いますか?」というシンプルな質問でした。
その子は、こう答えました。
"I think it is a good thing to study every day because we can get good grades and it will be useful for our future."
文法的にも構文的にもよくできています。
模範解答としては合格点でしょう。
でも、次に"Can you tell me more about that?(もう少し詳しく話せますか?)"と尋ねたところ、言葉が止まってしまいました。
少し考えてから、"Because it is useful for the future."と、先ほどの理由を繰り返すだけ。
それ以上の深掘りができなかったのです。
その先の言葉が出てこない
「どうして毎日勉強するのがいいと思うの?」と日本語で問い直してみました。
しばらく沈黙して、再び出てきたのは「将来のためになるから」。
でも、それ以上の言葉は出てきません。
そこで、私は問いかけ方を変えてみました。
「本当にそう思ってる? 毎日勉強するの、好き?」と、聞いてみました。
その瞬間、その子は少し困ったように、こう言いました。
「毎日はしたくない。だって疲れるし、友だちとも遊べなくなるし、イライラする。」
そのとき、空気がふっと変わった気がしました。
「勉強したくない」という言葉の奥には、子どもなりのリアルな気持ちや日々の経験が詰まっていました。
本音からはじまる、本当の意見
そのあとは、止まっていた言葉がどんどん出てきました。
毎日勉強すると疲れて集中できないこと
遊べないからストレスがたまること
たまには休んだ方が元気になれること
勉強しない日もある方が長く続けられること
本人の実体験に基づいた、説得力のある意見がたくさん出てきました。
たった数分前まで、「将来のためになるから」としか言えなかった子が、自分の言葉で自分の考えを語りはじめたのです。
子どもたちが「良い子の答え」を探してしまう理由
この経験から、私はあらためて強く感じました。
子どもたちは、「正解」を探そうとしてしまう。
大人が喜びそうな“模範的な答え”を無意識に探してしまう。
本当の気持ちを話したら否定されるかもしれない、怒られるかもしれない。
そんな不安があると、子どもたちは自分の意見に蓋をしてしまうのです。
でも、英検でも、アメリカの学校でも、本当に大事なのは「自分の意見を持ち、それを論理的に伝える力」です。
たとえ内容が大人の理想と違っていても、筋が通っていれば、それは立派な「英語力」であり、「表現力」なのです。
英検は「模範解答」を求めているわけではない
英検の面接試験は、模範的な答えをそらで覚えて言うテストではありません。
試験官が見ているのは、「この子は自分の考えを持っているか」「その考えに理由を添えて話せるか」「相手に伝わるように話しているか」です。
つまり、子ども自身の言葉と姿勢が問われているのです。
表面的な答えではなく、日常で感じていること、実際に経験したことを土台に話せば、自然と説得力のある英語になります。
それが、どんなに単語数が少なくても、ぎこちない文でも、面接官には「この子は自分で考えているな」と伝わります。
教える側にできること:問いかけと安心
では、指導する側や保護者は、どうすれば子どもたちが本音で話せるようになるのでしょうか?
一番大切なのは、「正しい答え」を引き出そうとしないことです。
むしろ、「あなたはどう思うの?」「それってどんなとき?」と、問いかけてあげること。
そして、どんな答えでもいったん受け止める姿勢を持つこと。
「それじゃダメだよ」ではなく、「なるほど、そう思ったんだね」「じゃあ他にも思うことある?」と声をかけていけば、子どもたちは少しずつ、自分の考えを言葉にできるようになります。

本音こそが、英語になる
「毎日勉強したくない」という気持ちは、決してダメな答えではありません。
むしろ、それが出発点です。
なぜ勉強したくないのか
どうすればもっと楽にできるのか
勉強以外のことも大切だと思う理由は?
こうした問いが生まれた瞬間、英作文にも面接にも深みが出てきます。
表面的な「いい子の答え」ではなく、自分の中にある本当の気持ち。
それを英語にして伝える力こそが、これからの時代に必要な表現力なのです。
まとめ:「正解」より「自分の声」を大切に
英検の面接対策を通して見えてきたのは、子どもたちの中にある「考える力」と「感じる力」の強さでした。
ただそれは、大人が「正しさ」や「型」にこだわりすぎると、簡単に隠れてしまいます。
英検の合格はもちろん大切ですが、それ以上に、自分の考えを持ち、それを恐れず言葉にできることが、人生において大きな力になります。
これから英検を受ける子どもたち、英語を学んでいるすべての子どもたちに伝えたいのは、こういうことです。
「正解を言おうとする前に、あなた自身の言葉で、あなたの考えを伝えてみよう。」
それが、英語を学ぶ本当の意味であり、英検の面接が私たちに教えてくれる大切なメッセージなのです。
記事作成者 (Manami Palmini ![]() 講師経歴
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